ゲートには頼りなさそうな若い兵士が立っていて、自作の記者証を見せて簡単に入れた。しかししばらくすると、その上官と思われる軍曹が寄ってきた。
「記者証を見せなさい」
「これは国際的な記者証ですよ」
「大会本部が発行した公式記者証でないとコース内に入れない。悪いがここから退出してくれ」
後でわかったことだが、陸軍兵士を動員して警備を厳しくしているのは、当時のウリベ大統領が観覧に来ていたからだった。別のゲートで何度も侵入を試みたが、どこも入場することができない。
パレード開始30分くらい前になって焦っていた時、コース内の木陰に隠れるように8人くらいのカメラマン集団を見付ける。私は人込みを押し寄せて強引にコース内に入り、彼らの中に紛れ込んだ。
「日本から来たジャーナリストです。よろしく。記者証を持っていないので」
「実は俺たちも公式記者証を持っていないんだ」
「兵士の嫌がらせはないのか?」
「この場所にいれば大丈夫。パレードが始まれば、警備の目は沿道の観客に向くから、そうすれば自由に撮影できるさ」
