実際にキューバへ渡航した経験がある人でも、意外と白人が多いのだなとくらいにしか感じないかもしれない。それは首都ハバナ、人気のある観光都市トリニダーやサンティアゴなど海に近い沿岸地域は黒人奴隷が多く流入した歴史がある。
その一方で、内陸部の主要都市サンタ・クララ、カマグエイ、オルギンなどは、家族で入植したスペイン人の子孫が大多数を占める。長年革命政権の舵取りをしてきたカストロ兄弟は、父親がスペイン北東部のガリシア地方出身で、オルギン州に大農園を開拓した。
白人率が高い中部の都市カマグエイのカフェにて
キューバが1990年代に公表した人種構成は、白人66%、黒人12%、白人と黒人の混血ムラートが21%、中国系などその他1%という内容だ。一方で国連が推計している人種構成は、ヨーロッパ系25%、アフリカ系25%、その他混血が50%となっており、国が発表した統計と大きな誤差がある。
この国の歴史は、西暦では1492年にコロンブスが到達する以前は記録されていない。それまではシボネイ族やタイーノ族など文字を持たない先住民が、原始的な生活をしていたとされる。しかしスペイン人によって植民地化された後、先住民は過酷な労役を強いられた。さらに疫病が蔓延して、免疫のなかったシボネイ族やタイーノ族は数十年ほどで死滅してしまったと言われる。
事実キューバには、先住民は現存していない。しかしキューバ人の顔立ちを見ると、白人でも黒人でもない他の民族と感じる人も見かける。白人を自称する人の一部には、かつて死滅した先住民と混血していると思われる人もいる。政府と国連の統計に誤差が出ているのはそのためだろう。
1959年に発足したキューバ革命政府は、それ以前にあった人種差別を撤廃。社会的に人種や男女の差別をなくして平等社会を築き、現在では世界で最も差別の少ない国の一つとなった。もはやキューバでは人種構成の統計は、意味を成していない。
サンティアゴの舞踊団にて、人種構成は雑多