その年の12月、私は再びエル・チャルテンの村を訪れた。バスで向かう道中は晴天が続き、村の手前でフィッツ・ロイ山が見えた時は、雲がほとんどない快晴で、登山や写真撮影に期待が感じられた。
その翌朝も晴天だったので、1人でフィッツ・ロイ山を目指して登り始めた。私が単独で行動したのは、山中の風景をじっくりと写真を撮りたいと思ったからだ。目指す地点は、フィッツ・ロイ山の直下にある小さな湖までの経路。村からの標高差は約750メートルで、所要7〜8時間ほどで往復できる。
登山道はまずエル・チャルテンの村から急な山道を300メートルほど登る。そしてカプリ湖を経て、川沿いに平坦な道を歩いていく。岩峰が切り立つフィッツ・ロイ山が目の前に見え、清流の周りを草地やナンキョクブナの森林が広がっている。そんなパノラマ感あふれる独特の風光明媚な光景を眺めながら、さらに上へ登っていった。
登山道の後半は、大きな石が積み重なっている急斜面だ。ここで一気に約400メートル登るのだが、手を付いて這って歩くような所もあって苦戦する。そして斜面を登り切ると、フィッツ・ロイ山がそびえていた。
チリのトーレス・デル・パイネにも似ている、花崗岩の巨大な岩峰が切り立っている。そして南側を少し登った所から、青々としたスシオ湖という氷河湖が見下ろせた。
現地では真夏の12月ということもあり、この日は終日晴天に恵まれ、数えられないほどカメラのシャッターを切った。その写真は自分で何度見返しても、惚れ惚れする作品となった。
追記:この時に撮影した写真は、多くの雑誌記事に掲載された。下記の写真は、ビジネス雑誌の『オルタナ』別冊号の表紙で使われたもの
posted by sakaguchitoru at 09:07|
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