2017年01月13日

アタカマ砂漠(下)

 アタカマ砂漠は海岸からアンデス山麓の標高3000メートル付近まで続いている。 
 この一帯はなぜ雨が降らないのか。それは、西側の太平洋上には年間を通じて強い高気圧が張り出しており,東側には6000メートル級のアンデス山脈が連なっていて雨雲が遮られるからだそうだ。南北の雨雲の動きはほとんどない。降雨がまったく記録されていない地点もあるという。標高が高くなるとわずかながら降雨があり,薄らと草が生える光景に変わる。さらに標高4000メートルを超えると湖や沼が姿をあらわす。
 この湖沼地帯を巡るツアーに参加すると,砂漠とはまた別の顔を見ることができると聞いた。前日の同じようなツアー用ミニバスに乗って,早朝にサン・ペドロ・デ・アタカマの宿を出発。東方面に向かって山道を上っていく。草が生えているところには数匹のウサギがいた。ビスカッチャと呼ばれる体長50センチほどのウサギは,茶色い毛並みがふさふさしていてかわいらしい。
 標高4000メートルあたりの水辺ではラクダ科のビクーニャが観察できた。パタゴニアに生息するグアナコにも似ているが,体は細くてしなやかだ。我々を警戒しつつも,興味ありげに5頭ほどのビクーニャが顔を向けていた。
 ミニバスは未舗装道を走り続けて標高4350メートル地点にあるミスカンティ湖に到着。アンデス山脈から雪解け水が流れ込む湖で,青い湖面と周囲の草地,そして背景の峰々が連なる光景は深く心に焼きついた。湖面にはクイナ科のオオバンが木の枝を積み上げて巣を作っている。
 さらに30分ほど進んだところにあるトゥヤイト湖は湖面が凍結している。アンデスの山並みが,湖に鏡のように映し出される様子は神秘的だ。
 標高4500メートル近くまで行くツアーは,高地の息苦しさと寒さに耐えながらの行程だったが,砂漠とは別の顔をもったアンデス山脈の自然美を体感することができる旅となった。

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2017年01月12日

アタカマ砂漠(中)

 サン・ペドロ・デ・アタカマの町はアルマス広場を中心に教会や役所,ホテルなどの観光施設が集まっている。散歩の途中で見つけた旅行会社で,バジェ・デ・ラ・ルナ(Valle de la Luna=月の谷)行きの半日ツアーを申し込む。
 町からミニバスで未舗装道を走ること30分。同行したツアー客とともに,ミニバスを降りて歩いてみた。岩肌には自然にできたくぼみがあり,名前のごとく月面を連想させる。地表は日中容赦なく照りつけた太陽の熱を溜め込んでいるかのように。時刻は夕方近くで気温が下がりつつあったが,余熱が靴底をジワジワと伝わってくる。
 再びミニバスに乗って向かった傾斜地には砂丘が広がっていた。面積はそれほど広くないものの,そこはサハラ砂漠を想像させるような砂丘だ。強風が時折吹き荒れて,激しく砂ぼこりが舞い上がり,我々ツアー客を悩ませる。
 自然の厳しさに触れた砂漠ツアーだったが,夕日に照らされた砂の文様は,人間では作り出すことのできない造詣美だと感じた。

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2017年01月11日

アタカマ砂漠(上)

 ペルーの首都リマからバスを乗り継ぎ,国境を越えてチリ最北端の都市アリカまでやってきた。この町から300キロほど南下するとイキケという小さな港町がある。リマからの道中は石化した地表や岩山など単色の景色が続いていたので,人の営みに思わずほっとする。
 そこから東へ向かって山岳地帯を走るとチリで最古の町のひとつサン・ペドロ・デ・アタカマにたどり着く。アリカから計10時間以上の長旅にもかかわらず,多くの観光客がこの町を目指すのは,アタカマ砂漠やアンデス高地へのツアー拠点となっているからだ。
 私がここを訪れたのは8月で,季節は冬。標高2500メートルに位置する町だが,日中は半袖で過ごせる。日が暮れ始めると次第に冷えこみ,眠るときは毛布3枚が必要になるほどだった。

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